2010年6月24日木曜日

パーソナルロボット産業の創出(全文)

PR2ベータプログラム祝賀パーティ ー 2010年5月26日
ウィローガレージ社創業者Scott Hassanのスピーチ(日本語字幕つき)

祝賀パーティの様子は、こちらの記事をご覧ください。



今夜は、みんなに3つのことを話せることを
すごく楽しみにしているんだ。
「なぜ、ロボットは素晴らしいのか?」
「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」
それから、
「どうすれば、ロボットが実現するのか?」


1. 「なぜ、ロボットは素晴らしいのか?」



じゃあまず最初の「なぜ、ロボットは素晴らしいか?」
を説明するために
ちょっと後ろに下がって、
大きな視点を見てもらおうかな
あれ、どうしたかな。
もうちょっと大きかったはずなんだけど…

さて、僕らはみんなこのナイスで小さな惑星に住んでいるけど
ここってすごく生産的なところだよね。

世界総生産(GWP)は、
ざっと61兆ドルって言われてる。
すごいお金の量だよね。
だけど、これってどこから来てると思う?

実は、この生産性のほとんどは、
工場から来てるんだよ。
それから、古い時代から、すごく成長している
(あ、これ古いスライドだ。笑)
すごく生産性が上がったわけだけど、
そのほとんどは工場のおかげなんだよね。

工場の中ではね…、
そうだ、ちょっと工場について話そうかな。

2、3年前、いやもう10年ぐらい前だな、
僕もちょっと年をとったからね。
何人かの友達と、ほとんど今夜ここに来てるけど、
日本に行ったんだ。

たくさんの素晴らしいお寺とか大都市とか、
それから温泉にも行ったよ。
そうそう、あそこに僕が写っている。
温泉に行くのは絶対におすすめ!

でも、僕らが訪れた中で一番感動したのは
トヨタの自動車工場だったんだ。
少なくとも、僕はそう思った。

トヨタの工場ではほんとに感動したよ。人々がせっせと働いてて、
そこでロボットもせっせと働いてるんだ。
「うわ!すごくクールだよ!」って思った。

「何人ぐらい働いてるんですか?」って
ツアーガイドの人に聞いてみたら、
「400人ぐらいですね」って言うから
「ワオ(すごい)!」って言ったよ。
それで「車、何台ぐらい作ってるんですか?」って聞くと
「1シフトで500台です」って。また「ワオ(すごい)!」だったよ。

これは、絶対的な感動だった。
400人の人間が1日に
そんなたくさんの車を作れるなんて。
自分が車をつくると考えたら、
工具や材料がぜんぶ揃っていたとしても、
自分だけでやろうとしたら
何年もかかるだろうね。

で、「なんで彼らはあんなに生産性が高いんだ?」
って考えてみたんだ。
「僕より強いから?」
「それとも、速いから?」とかってね。
いや、結局は、君とか僕と同じで、
何も違わないんだよ。

だけどもしそうだとしたら、
何かもっと特別な理由があるはずなんだ。
それで気づいたのは、彼らは、自分たちのターゲットとしている
製品をつくるために、すべてが最適化された工場で働いてるんだってこと。

トヨタはもちろん、人間や機械、
組立ラインなどを使っているんだけど、
この高い生産性を創り出すのに一番重要なのは、
オートメーションとロボットだってことなんだ。

ということで、じゃあ、
もしオートメーションを工場から
僕らの日々の生活に持ってきたら何が起こると思う?
とってもクールだよね?

だって僕のまわりのオートメーションだと、
たとえば洗濯機と乾燥機があるんだけど…
あーあぁ…
洗濯機は洗い上がった衣類を、
乾燥機に入れることもできないんだよ!

ところが工場だとフロントガラスを取り付けたり
信じられないようなことをいっぱいしてるんだ。
だから、もし、実現できたらどうなると思う?
もし工場の生産性を僕らの生活に持ってこれたら、
何が起こるだろう?

世界経済はとんでもなく、
でかくなれると思うんだ。
僕が言ってるのは、1%やそこらの経済成長じゃない。
何百%っていう話だよ。

だから、最初に話した61兆ドルを
そう、例えば、200でかけたら、
今から100年後のGWP(世界総生産)は、
それぐらいの数字になる可能性がある。

僕がやりたいのはそういうゲームなんだ。
大きなゲームがしたいんだよ。

それで、「なぜ、ロボットは素晴らしいか?」だけど
つまりロボットが素晴らしいのは、
世界経済にいい影響を与えるからなんだ。

それと
ロボットを欲しくない人っているのかな?
みんなが欲しいと思ってるもののひとつだと思うよ。

今年の1月、母に聞いたんだよね。
っていうのは、父が「なんでお前はロボットを作ってるんだ」
なんて言ったからなんだけど。
「ロボットを、一体誰に売るつもりなんだ?」とかってね。
僕は「わからない。それはまだこれからだよ」って答えた。

で、母に聞いたんだ。
「ねえ、お母さん、ロボット買いたい?」って。
「イエス!!!私は、ロボットを買いたいわ!」
即答だったよ。
「やった!最初のお客さんをゲットしたぞ!」って。でも…


2. 「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」



2つ目の質問は、
「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」だったね。

もしロボットがいいアイディアで、生産性もあげてくれるのなら、
なぜここにいないんだろう?
いい質問だよね。

小さなルンバが動きまわったり、
ほかにも2、3のロボットはあるんだけどね。
でも、なぜ世界博覧会で約束されたような
ロボットがまだいないのかってことなんだ。

その質問の答えは「ロボットは難しい」なんだ。
ロボットって、本当に難しいんだよ。

なぜ難しいかっていう理由の一つは、
機械系と電気系とソフトウェアなど、
いろんなものが複雑に組み合わさってるからなんだ。
そう、すごくすごくたくさんの
ソフトウェアが必要なんだ。

この複雑なものを創りあげるためには、
すごく優秀な機械系エンジニアと、
すごく優秀な電気系エンジニアと、
とても素晴らしい
ソフトウェアエンジニアが必要なんだ。

で、そういう人たちを見ていて
わかったんだけど、
僕はソフトウェア出身だから、
こっち側の世界いるんだけど、
機械系エンジニアと話を始めてみたら、
彼らはまったく違う言語で話すんだよ。

彼らとは、話すだけでも本当に大変だった。
なんでかっていうと、いつもこう言うんだよね。
「あー、これはソフトウェアの問題だよ」
で、僕は「違うよ、システムがちゃんと動かないからだよ」って。
で、お互いを批判しあうことになる。だから、
彼らをいっしょに働かせるのはほんとに難しいことなんだよ。

だけど、とってもいい解決方法を見つけたと思う。
「食べ物をあたえる!」ということ。
ま、そしたら...

そう、今はロボットは難しい、
でも問題はもっとたくさんある。
もし問題が一つだけだったら
そんな大きな障害にはならないよ。

今、ロボットにはほとんど投資が
行われてないっていう問題がある。
もうほんとにないんだよね。
特にパーソナルロボットは。

日本は、パーソナルロボットに
多額をつぎこんでる。
なんでかっていうと、国としての(なんて言えばいいかな)、
すごく多い高齢者への
国としての義務として捉えている。

もし投資が行われないと、
人々は研究をしようともしない。
あ、もしここに、ベンチャーキャピタルの人がいたら、
ぜひ、ロボットに投資していきましょうよ。

それで、ロボットになぜ投資が向かわないか?
最も大きな理由は、
(パーソナル)ロボットのマーケットがないからなんだ。
だって、今のロボットは、全然、役に立つことができないから、
お金をつかってもほしいと思えないんだよ。

ということで、マーケットがなかったら、投資は行われない。
投資が行われないから、だれも研究しない。
だから、まだ、ロボットはいないんだよ。
かなしい時代だよ!
おっと、(PR2ベータプログラム参加者に対し)
君らにはロボットがあるよ。(笑)

つまり、これは古典的な
「にわとりと卵」の問題ということ。
ロボットがなければ役に立つアプリは開発できないし、
役に立つアプリがなければロボットは生まれない。


3. 「どうすれば、ロボットが実現するのか?」



ここまでは、
「なぜ、ロボットはまだいないのか?」っていう問題。
では、最後の質問は
「どうすれば実現させられるか?」
「どうすれば”僕らは一緒に”実現させられるのか?」です。

まず、最初に、自分たちだけではできない。
っていうより、自分たちだけで”やりたくない”んだ。
なぜかって?それは、いろんな人たちと一緒にやったほうが楽しいから。

だから、僕らがやっているのは、
僕らの戦略は、研究者や開発者、
企業や産業界の人々による
コミュニティを創り、
一緒に働けるようにすること。新しい産業を創り、
ロボットを実現するという夢に向かって。

僕らが貢献できるかもしれないものは、
”プラットフォーム”なんだ。
頑丈で堅牢なプラットフォームがあれば、
みんながそこから新たなものを構築し、立つことができる。

ソフトウェアエンジニアはソフトウェアに専念でき
ハードウェアエンジニアは、
ハードウェアにあまり時間を使わなくてすむから
研究者たちはその分、すごく高度で、
難しいことを解決できるようになる。

この「プラットフォーム(土台)を創る」
というのがぼくらの戦略で
どんなものか、もう少し後で見てもらえるよ。
すごくたくさんのものでできてるんだよ。

僕が一番言いたい大事なことは、
ウィローガレージは、
これを自分の所有物にしないってこと。
コントロールもしようとは思わない。
僕らはゲートキーパー(門番)なんかしたくない。
このシステムのアプリ承認なんてしたくない。(拍手)

だけど、何より大事なことは
減速しないということ。
(車の)ペダルをメタルに届くぐらい思い切り踏み込んで
この波を加速させ、ロボットを実現させたいんだ。

「なぜ」って?だって僕は若くなれないから、
生きてるうちにこの夢を叶えたいんだ。
そう、これが、僕がウィローガレージを始めた理由。
そして、パーソナルロボットを出現させ
新しい産業を築くというこの会社のビジョンなんだ。


4. ウィローガレージ社のはじまり



これで用意した小さな質問には答えたから、
ここで、ウィローガレージを
はじめた時のことを話したいと思う。

スティーブと僕は一緒に色々試してみたり、
小さなプロジェクトを始めたんだけど、
ある日スティーブが「ちょっとスタンフォードに行かない?
見せたいものがあるんだ」って言ったんだ。
で、僕らはスタンフォードに向かった。僕は「うわー、そういえば
スタンフォードは久しぶりだな」って感じだった。

行ってみると、そこには
2人のちっちゃな子供(キッズ)がいて、
いや失礼、2人の大学院生がいて、彼らが
大切に作った木製のロボットを見せてくれたんだ。

ほんとに感動したよ。
すごくわくわくした!
そのロボットは部屋を掃除したり、
いろんなものをつかみあげることができたんだ。
「これすごいよ!うちには子どももいる。完璧だ!」
ナイフを持って、きゅうりを切ることもできたし、
誰かお年寄りの口に、あ、違う、キーナンだったな、
食べ物を運んで食べさせることもできた。
僕は「これ、すごいよー!」って。

一番感動したのは、彼らが、PR2プログラムやロボットを創るための
しっかりしたビジョンを持ってたってことだった。
しかも、約9ヶ月あればそれらのロボットができるって言う。
僕はもう「すごい!完璧だ!」って興奮状態だった。
「うちの奥さん、いやうちには、
赤ちゃんと調理器がいるんだ。よし競争させよう!」

やっぱり、思いどおりに、
2年半という時を経て、
その間に2人の子どもも生まれ、
ついに今日という日を迎えることができました!
この素晴らしい…テントの中で。しかも雨も降ってない!

では、そろそろここで
この2人の大学院生に登場してもらい、
あ、もう大学院生じゃないか。
チームのみんなと一緒に僕らが取り組んできたことを
披露してもらおうと思う。

そして、これが、
どのように世界を変えていくかを。

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